なぜ日本のIT現場は“炎上プロジェクト”ばかりなのか?『人が壊れるマネジメント』著者に聞く【谷口友妃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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なぜ日本のIT現場は“炎上プロジェクト”ばかりなのか?『人が壊れるマネジメント』著者に聞く【谷口友妃】

なぜIT企業では人間が壊れるのか? 話題の著者・橋本将功氏インタビュー

■「ざっくり見積もり」を全力で回避しろ!

 

 無茶なスケジュールで残業や休日出勤が続いてしまう“炎上プロジェクト”の多くは、甘い「ざっくり見積もり」から生まれている、と指摘する。

「ざっくり見積もり」とは、企業から受注したサイト・サービス開発の案件で、納期や予算を甘く見積もって、結果安請け合いしてしまうことだ。

「仮にアプリ開発が3,000万円でできるとしても、そこに要件として基幹システムとの連携が入るだけで工数がまったく変わる可能性があります。その追加要件一つで予算が5,000万円になることもあるんです。でも技術への理解が深くなければ、予算やスケジュールを追加しなきゃいけない、という発想にはならない。そうして、計画の不備をプロジェクトメンバーのサービス残業などでまかなおうとしてしまうんです」

 踏まえて見積書は、ITエンジニアやプロジェクトマネージャーを交えて現場のプロで作成し、フォーマットは「積み上げ式」にすることをすすめる。

 また、橋本さんは現在AIを活用したプロジェクトマネジメントツールの開発に取り組んでいるというが、これはざっくり見積もりにも効くという。

「AIが客観的に予算変更の必要性を教えてくれるので、人間の感情や空気に左右されずに済みます。日本人は空気を読んで言わなきゃいけないことを言いそびれがちですから、都合の悪いことは全部AIに任せましょうと」

 見積もりしかり、今後はIT業務に関するリテラシーがますます求められる時代になり、格差も広がっていくという。

「ITに強い会社は適切な予算でプロジェクトを回し、お客さんに提供できるサービスの質をどんどん高めていけます。しかしITに弱い会社は、プロジェクトに投資しても失敗を繰り返し、お客さんを引き付けるサービスを提供できない。だからこそ経営者や管理職にはリテラシーが求められます」

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「目標の不明確さで壊れる」
「経営陣の無理解で壊れる」
「意思決定過程への非参加で壊れる」
「マイクロマネジメントで壊れる」
「組織文化とのミスマッチで壊れる」
「実行したタスクがキャンセルされて壊れる」

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谷口 友妃

たにぐち ゆき

幼少期に父を亡くしシングルマザーの家庭で育つ。心臓病の母との生活で感じた社会の歪みや、働く意味を求めて天職探しをした経験などから「仕事と生きがい」、「幸せな社会のつくり方」などのテーマに関心を持つ。2014年から執筆業を始め、多様な業界で働く人を紹介する社内報の巻頭記事や医療情報の取材記事、介護問題を扱う著名人の連載インタビュー企画などを担当。過去に取材した人の数は2000人以上にのぼる。読売新聞オンライン、みんなの介護「賢人論。」などに記事を執筆。

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